南オランダから車で2時間、遠くに霞むはフランスの教会、というベルギー・フランス国境へ行く。周りには何もない。本当に何もない。牛と青い空と風にそよぐ緑の草がサワサワと音を鳴らしているだけ。そこにその花のアトリエはあった。
広大な芝生に車が溢れている。こんな田舎目掛けて多くの人がやってくる今日はこのアトリエのオープンデイ。季節ごとにアトリエを公開・顧客を招待している日なのです。
見事なまでに美しい芝生を贅沢にも車のタイヤで踏みつけながら駐車した後、綺麗に刈られたボクサスを両脇に門をくぐり、砂利をしばらく歩くと目の前にレンガ作りの建物が。
このアトリエのオーナーは、フローリストのパティエン・ヒート氏。
なんといっても特筆すべきは彼の仕事のスタイルである。左の建物は彼のご両親と彼の住まい。正面に彼のアトリエ兼フリールーム。そして後方に広がる大きな大きな庭。
要は正真正銘の田舎の自宅にアトリエを構えたところ、それが大きく功を奏し、こんな不便極まりない場所にも関わらず、顧客が絶えずに商売が繁盛しているという非常に羨ましい状況にあるフローリストなのだ。
とはいってもタダ単なる田舎にある一軒家かというと決してそうではないのは当たり前である。やはりそこはアーティスト。広大な土地の所々に置かれているブロンズ製のオブジェは同じベルギー人アーティストによる作品群で統一されており、洗練された野性味を感じる。
昔、馬の厩舎だった場所は普段はフリースペースでパーティー用に使われることが多いとのことだがこの日は丸テーブルが3つ置かれ、美しい緑色を基調としてアレンジされていた。


アトリエはいくつもの部屋に別れ、彼の得意とするアレンジで飾られている。次々やってくる顧客達は本で見ることのできる作品をこの時ぞ、とばかり買いまくっているようだ。古い木製家具と自然素材を使ったモダンデザインの家具の調和が心地よいが、やはり素晴らしいのは庭だった。
鬱蒼と茂るバラやルピナス、クレマチス、ハナミズキ、ロザセア、カルピナス・・水やりを考えただけでゾッとしてしまうほどの広さ。これはきっとご両親のお仕事なのだろうか・・・

彼は日本ではあまり知られていないが、ここベネルクスでは大変人気のあるフローリストの一人である。あちこちにあるベンチに腰掛け、のんびりと空を眺めてはアトリエに入り、庭のバラの香りを楽しみ、友人とお茶を飲み。。。と、のどかな日曜日を満喫しているうち、
その人気の理由が分かった気がした。
勿論彼の独特のアレンジメントの魅力は言わずもがなだが、オランダでは花屋というのは時間との勝負である。いかに効率よく、手早く、そして素敵に幾つものアレンジを仕上げるか、田舎であれ都会であれ、それが一番大切なことである。
それに比べてこの空気ののんびりとしたこと。なんせ周りに何もないのである。電話で注文を受け、広大な庭からグリーンを選び、お茶でも飲みながらアレンジをするのだ。なんて贅沢、これに憧れない人がいようか。
アトリエではお香が焚かれていた。しかし音楽はなかった。美しいものをさんざん見た後、急激にお腹がすき、なぜか無性に天ぷらが食べたくなった。冷えたアルザスと矢野沙織のサックスを聴こう!と心地よい開放感を抱えたまま帰途を急ぐ私であった。
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テーマ:オランダなヒビ - ジャンル:海外情報
- 2004/06/20(日) 06:32:48|
- 花・オランダのフラワーデザイン
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